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Aboriginal and Torres Strait Islander people should be aware this website contains images, voices and names of people who have died.

メモリアル・ポール

「ララキッチ(Larrakitj)」は、 ストリンギーバークと呼ばれるユーカリの木の一種のうち、シロアリに食われて中身が空洞になったものを材料として作られた、「メモリアル・ポール」です。土性の天然塗料(絵の具)で色付けされたミスター・ワナンビのララキッチ作品は、海水をイメージした模様が付けられており、この世界の創造と先祖たちのものがたりを伝えています。この時を超えたメモリアル・ポールは、アーネムランド北東部のヨルングの民の文化が持つ力と強さを示しています。丸太状の木を用いた棺おけは、伝統的な文化工芸品です。メモリアル・ポールは、この神聖な文化習慣を現代的に芸術表現したものです。

<p><span style="font-family:&quot;Yu Gothic&quot;,sans-serif;font-size:16pt;line-height:130%;" lang="JA">ミスター・ワナンビの「ワウリチュパル」インスタレーションは、9本のララキッチからなる作品で、2015年にはオーストラリア国立博物館の「Unsettled」展の一部として展示されました。「ワウリチュパル」とは、ポールに描かれているボラという魚を指すことばです。</span></p><p><span style="font-family:&quot;Yu Gothic&quot;,sans-serif;font-size:12pt;line-height:130%;" lang="JA">オーストラリア国立博物館</span></p>

<p><span style="font-family:&quot;Yu Gothic&quot;,sans-serif;font-size:16pt;line-height:130%;" lang="JA">ミスター・ワナンビの「ワウリチュパル」インスタレーションは、9本のララキッチからなる作品で、2015年にはオーストラリア国立博物館の「Unsettled」展の一部として展示されました。「ワウリチュパル」とは、ポールに描かれているボラという魚を指すことばです。</span></p><p><span style="font-family:&quot;Yu Gothic&quot;,sans-serif;font-size:12pt;line-height:130%;" lang="JA">オーストラリア国立博物館</span></p>

「ものごとの外部表面は、中にあるものを隠します。私は、その隠されているものを共有したいのです。(アーネムランド北東部の先住民である)ヨルングの文化では、たましいや精神の一生を理解することは、サークル(円形/輪)なのです。そしてララキッチも、輪です。私たちは自らのアイデンティティを探し求めています。そして自分の運命を見つけるまでぐるぐると探し続けた後に、見つけたらその輪にまっすぐと向かっていき、輪に加わることで、ファミリーの一員となるのです。


私たちは、ララキッチを棺おけとして使っていましたが、現在ではララキッチを地中に埋めるのではなく、アート作品として人々に鑑賞してもらいたいと思っています。私たちは、たましいや精神は水を通じて旅をした後に元の場所に戻って、再び新たに生まれるのだと信じています。肉体は分解されて消めつし、ララキッチが腐り果てていくにつれて、骨も大地へと戻っていくのです。長年、先住民の血を引かない人たちとも、この考え方を共有したいと考えていました。中に何が入っているのかを皆に見てほしかったのです。ララキッチの中を。私たちの運命の中を。私たちの心の中を。


そして、メモリアル・ポールの中には何が入っているのか? 描かれたもようの下には何があるのか? ストリンギーバークの木は(先住民の)通常言語では「ガダイカ」と呼ばれていますが、ワナンビ、ビニクルング、マウルルという神聖な呼び名も持っています。そこにあるのは、私の部族「マラクル」の者のイメージ/たましいです。このたましいには、ジョルワ、ガジニジ、ダルタングという神聖な呼び名があります。私たちはガダイカの木の一生のサイクルすべてを歌い、そこには木が倒れるときのことも含まれています。蜜や花、それに芽。それも我々と同じように、おどるのです。


木が倒れると、まるで(北部準州、アーネムランド北東部近辺にある)トライアル・ベイでグルカウイ川が洪水になって海に流れていくかのように、蜜が流れ出ます。それは、この水の中にあるのです。このデザインでは、マラクルの部族が自分の母の母、バラムムに出会うのです。この水の中には巨岩で作られた像があり、それぞれ名前が付けられています。


それにダラパやワルワダ、ワルウィチュパルという種類の魚たち。彼らはこの土地の先祖なのです。彼らは岩までやって来たところで、行く手をふさがれていました。しかし彼らは、空中に飛びはねることができるのです。そして空中から再び水の中へ。彼らのたましい/精神の旅は続きます。それはサイクルなのです。」

ミスター・ワナンビ

ミスター・ワナンビ

ミスター・ワナンビの父、ミティリ・ミスター・ワナンビは画家でしたが、ミスター・ワナンビが神聖なアートについてしっかりと教わることができるようになる前に、亡くなってしまいました。1997年、ミスター・ワナンビは「ソルトウォーター・プロジェクト」という大きななアート・プログラムの制作に参加し、画家としての活動を始めます。マラクル族(アーネムランドのヨルングの民の一部)のうち、ミスター・ワナンビの一派は、トライアル・ベイの海水のイメージを代々受け持っており、このイメージはミスター・ワナンビの父が1981年に亡くなって以来、しっかりと描かれていませんでした。

ミスター・ワナンビは、後見役である「ジュンガイ」(資格を有する若い男性に、部族の法や、それを絵画デザインでどのように表現したら良いのかを教えることができる、文化の管理を担う者)の持つ知識を頼り、活用しました。特に頼りにしたのが、今は既に亡くなってしまったヤンガリニー・ウヌンムラ(1932年~2003年)でした。このようなことがあったため、ミスター・ワナンビは海水のデザインを受け継いで、それを描くことを認められました。デザインの一部は、ミスター・ワナンビの父が作った、公開されている作品レパートリーにも含まれていないものでした。

ミスター・ワナンビは、ヌルンブイ・ハイスクールとドゥプマ・カレッジで教育を受け、ニュー・サウス・ウェールズ州スポーツ・レクリエーション省職員や保護観察・保釈担当官として働いたほか、地元の資源採掘現場での就労経験もありました。5人の子供に恵まれ、孫もいました。そして妻のワラインガもまた、アーティストでした。

ミスター・ワナンビの最初のバーク画作品は、1998年のNATSIAA(全国アボリジニ・トレス海峡諸島民アート賞)でベスト・バーク賞を受賞しました。そこから、注目を集めるアーティストとしてのキャリアをきずき上げていきました。2003年のNATSIAAでは、ミスター・ワナンビが彫刻の手法で制作したララキッチが、立体作品部門で高評価賞を受賞しました。その後も2007年にはTogArtコンテンポラリー・アート賞(北部準州のアート賞)で、ピープルズ・チョイス賞を受賞しています。2010年と2018年にもNATSIAA賞で立体作品部門の賞を受賞し、以降その作品は有名ギャラリーなどの所蔵品に加えられてきました。

2004年には、北部準州の州都ダーウィンのラフト・アートスペースで初の個展を開き、2005年と2008年にはメルボルンのナイアガラ・ギャラリーでも個展を開催しました。ミスター・ワナンビは近年の大きなコミュニティ・プロジェクトにも深く関わっており、一例としては、シドニー・オペラハウスからの依頼による大きなプロジェクトや、オーストラリア国立博物館の開館事業、ダーウィン最高裁判所のウキディ・インスタレーションなどが挙げられます。その他にも、Lonely Boy RichardThe Pilot's FuneralDhakiyarr versus the King などの映画作品にも関わりました。

ミスター・ワナンビは、コミュニティのレクリエーションや医療・保健プロジェクトに積極的に関わっていました。2008年には、ダーウィン・ウォーターフロント開発事業における、建物の正面に位置する地上7階まであるガラス張りのエリアに入れるためのインスタレーション作品の制作も依頼されています。2007年には、(アーネムランドにある先住民アートセンターである)ブク-ラルンガイのメディア・センターであるザ・マルカ・プロジェクトのディレクターに就任しました。在任中は「ナーマDVD」などのメディアプロジェクトを進めたほか、ヨルングの民の青年たちがメディアセンターでトレーニングを受けたり働いたりする機会を得られるよう指導しました。

ミスター・ワナンビは、2022年に亡くなりました。

「私のものがたりは、今日も生きている。私の歴史は、積み重ねられていく。私のアイデンティティは、より強く。死に向かってなどいない。私が共有すればするほど、私はより強くなる。より大きな力を手にする。だからこそ、ララキッチが作品として博物館に設置されたときに力を発するのだ。」- ミスター・ワナンビ 

Mr Wanambi

バナー画像:ミスター・ワナンビの「ワウリチュパル」インスタレーションは、9本のララキッチからなる作品で、2015年にはオーストラリア国立博物館の「Unsettled」展の一部として展示されました。「ワウリチュパル」とは、ポールに描かれているボラという魚を指すことばです。

オーストラリア国立博物館